どうもありあけです。
『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』のスピンオフ『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜 別章 アンボックス』ですが・・・
とんでもない名作です!
『アンボックス』は本編でいう単行本17巻と18巻の間の物語になっており、殺人事件を題材に警察の苦難が描かれています。
『ハコヅメ』ファンである
凶悪事件や重めのストーリーにも耐性がある
警察官志望で負の側面も知りたい
内容がとても重いですが読む価値ありです!
記事は宣伝効果による製作側の利益増加とネタバレによる利益減少を考慮した上で掲載しております。
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ありあけと製作者がwin-winになればいいなと考えております。
この記事はすこしだけネタバレがあります。
ネタバレによる購買意欲の低下を心配される方はご注意ください。
あらすじ
“絆”というの名のもとに優しさを差し出されると、黒田カナは「仲間になれない」と思ってしまう――。
そして警察官なら誰しもが持つはずの正義の心と、番記者、住人、被害者……それぞれの正義。
これは、いくつもの正義が交錯する中で事件を解決するために、不作五人衆の一人とされた彼女が、自分の「正義」を貫き通していく物語である。
〜講談社の青年漫画誌「モーニング」の公式サイト〜
単行本13巻107話「牧高の受難」で登場した「バカップル」。
喧嘩&通報&仲直りループが殺人事件に発展し、町山署全体で捜査解決を目指します。
凶悪事件に伴う苦悩と作者の強烈なメッセージに注目です。
シリアスで内容も濃すぎる
内容がシリアスで濃すぎるので最後まで読むのに2時間かかりました。
伏線回収のオンパレード
シリアスがもはや限界突破している
「最悪の裏切り」とは
作者の強烈なメッセージ
黒田カナと作者が重なる
伏線回収のオンパレード
『アンボックス』では本編に散りばめられた伏線が大回収されています。
単行本13巻で登場したバカップルが事件の当事者になっています。
また生活安全課の黒田カナの「どうせなら正義の側になりたくて警察官になった」という人物像が源の出生といった伏線の回収によって掘り下げられます。
単行本16巻139話「最後の昼餐」、単行本17巻149話「撮り直せない写真」など全ては紹介できませんので他の考察サイトでもご参照ください。
本編で数ヶ月にわたって伏線を仕込んでいたのがわかります。
シリアスが限界突破している
『アンボックス』は笑いなしでシリアスが限界突破しています。
距離を置くように説得した後日、カップルの部屋は血だらけで男は行方不明と報告が入ります。
署員が事件の解決に向けて動きますが、警察による対応歴があるという報道で地域住民の警察への不信感が高まります。
住民の協力が得られず事件解決は遅れます。そして雰囲気の悪化に便乗した軽犯罪が増える悪循環に陥ります。
事件と誹謗中傷に追い詰められる被疑者遺族と疲弊する現場のリアルを描いています。
「最悪の裏切り」とは
『アンボックス』は本編でも「最悪の裏切り」が起こると示唆されていました。
裏切り者が黒田カナであることも暗示されていました。
疑問だったのは「警察官としての最悪の裏切りとはなんなのか」ということでした。
回想シーンで警察学校時代の教官だった横井の指導は以下のとおり
「おまえらは国民を守る大事な使命を担っている。腰の拳銃はそのために国民が託した警察への信頼の証だ。
よってこれだけは絶対に許さん。拳銃自殺は国民と組織に対する最悪の裏切りだからな。」
〜『ハコヅメ 別章 アンボックス』その7「最悪の裏切り」〜
「最悪の裏切り」とはそういうことだったんですね。盲点でした。
黒田カナは要領がよく、どこか達観していて、メンタルが壊れるイメージのないキャラだったのでとても意外でした。
作者の強烈なメッセージ
過去に泰三子先生はあるインタビューで『ハコヅメ』を書いた理由を次のように語っています。
きみたちが思っているような人よりも、もっとずっとしょうもない人たちが、仕事に振り回されながらやってるんだよ、ということを伝えたい
〜 2018年4月「ベストカーWeb」インタビュー 〜
泰三子先生インタビューまとめはこちら。
『アンボックス』では作者から強烈なメッセージが伝わってきます。
特に3つのことについて考えさせられました。
男女事案はとても難しい
警察組織への願い
マスコミへの願い
男女事案はとても難しい
『アンボックス』で改めて男女事案の難しさを感じました。
単行本4巻34話「男と女と警察と」のストーカー事件でも男女の別れ話が殺人未遂事件に発展しました。
男女や家庭関連の事件は警察の介入が難しく、つながりが深いので重大事件になりうる特徴があります。
実際の統計「犯罪白書」でも、殺人事件の半分以上は親族間で、恋人や顔見知りまで入れると9割近くを占めているのが現状です。
警察組織への願い
警察組織の在り方に対してもメッセージが感じ取れます。
警察組織について、性犯罪捜査をはじめ女性警察官の増員がなされたようですが、女性警察官には超ハイスペックが期待されています。
警察官としての強さ・忍耐強さに加え女性としての優しさ・男性社会での適応能力などが求められ、まさに「戦隊ヒーローのピンク」である、ということです。
女性警察官に限らず、日本が世界に誇る治安と警察への信頼は、長時間残業や期待の上乗せなど個人への負担で支えられている、ということだと感じました。
マスコミへの願い
元警察官としての作者がマスコミのことをどう思っているのかも描かれています。
泰三子先生のマスコミへの批判と期待が表れているように思います。
「表面上の報道で世論を無駄に煽る姿勢や撮影のために現場を荒らす行為」は批判し
「法が行き届かない問題を取りあげて社会問題の解決に取り組む同志」としては大いに期待している、と感じました。
マスコミの悪い側面も良い側面も伝えようとしている公平さが見てとれます。
黒田カナと作者が重なる
最後に黒田カナは退職し、社会的起業家となり新しい人生を歩み始めました。
そして退職といえば作者の泰三子先生も同じです。前職の経験を生かして漫画を書いています。
警察官として市民を守る道もありますが、警察というハコから飛び出して社会へ問題提起する泰三子先生の姿は黒田カナと重なります。
『ハコヅメ』シリーズがきっかけとなって、警察官の過労死問題や長時間労働問題、犯罪被害者(遺族)・犯罪加害者(遺族)への誹謗中傷が改善されて欲しいです。
結論:『アンボックス』はドラマ10話分の内容が詰まった名作です
伏線回収のオンパレード
シリアスがもはや限界突破している
「最悪の裏切り」とは
作者からの強烈なメッセージ
黒田カナと作者が重なる
正直まとめきれませんw
『アンボックス』一冊でドラマ10話分の内容でした。この一冊だけで名作です。
元警察官としての警察組織への考えやマスコミへの考えを、男女事案の難しさなど、その内容の濃さは漫画の域を超えているといえるでしょう。
まだ作品の良さが知名度や売り上げ部数に反映されてないなと思っています。
そして本編『ハコヅメ』やドラマ版の感想記事も書いています!よければどうぞ!
今日はこの辺でまたね。